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zoom RSS 「検証 経済失政 誰が、何を、なぜ間違えたか」軽部謙介・西野智彦 著(読書感想文)

<<   作成日時 : 2008/12/23 00:53   >>

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「100年に1度の経済危機」を迎えた今年の10年前である1998年には、長銀・日債銀の連鎖破綻という、下手をすると「日本初世界金融恐慌」になりかねない事件が起きたわけだが、その前年である1997年にも山一證券破綻に象徴される大事件が続々と起きた。
本書は、(今のところ)戦後最大の経済混乱が発生した97年に、財政・金融をめぐって一体何が起きたのかを検証するドキュメンタリーで、「経済迷走」「経済暗雲」と続く「西野3部作」の第1弾。
http://www.amazon.co.jp/%E6%A4%9C%E8%A8%BC%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%A4%B1%E6%94%BF%E2%80%95%E8%AA%B0%E3%81%8C%E3%80%81%E4%BD%95%E3%82%92%E3%80%81%E3%81%AA%E3%81%9C%E9%96%93%E9%81%95%E3%81%88%E3%81%9F%E3%81%8B-%E8%BB%BD%E9%83%A8-%E8%AC%99%E4%BB%8B/dp/400022705X

今まで何度か読み返したけれど、そのたびに、手に汗握るというか、肌に沫が立つのを覚えるというのか、事実が持つ迫力が伝わってきて、何度読んでも興奮する。どうしてこんなに克明に書く材料を集められたの?と驚嘆している。
新たな金融危機が進行している今日、本書を読み返すことにも何らかの意義があるのではないか。


本書が取り扱っているのは、「97年危機」に関連した、財政構造改革の動きと、金融行政の動き。この両者は当時は同じ大蔵省が扱っていたという意味で共通点を有するけれど、本来はかなり異質な問題。ぷぅさんが特に関心を抱くのは金融行政の方。
主な登場人物(肩書きは本書に出てくるもの)
三塚博(大蔵大臣)長野厖士(証券局長)小手川大助(証券業務課長)山口公生(銀行局長)中井省(銀行局審議官)吉沢保幸(日銀証券課長)

今回読んでいて、しびれた場所。
206頁
「長野、小手川を男にしたい。」これが吉沢の口癖だった。

しびれちゃうじゃぁないですか。

ここに出てくる長野証券局長という方は、その後、接待問題でマスコミの集中砲火を受けて退官。また、発言者の方の吉沢証券課長も、その後、日銀接待問題で逮捕されてしまう。
その意味で、問題が多かった人たちなのかもしれないけれど、でも、「男にしたい」という言葉は、そう簡単には出てこない。文字どおり、命をかけて、真剣に仕事に取り組んだからこそ、そのような言葉が出てきたのではないか。
翻って、今、身の回りを見て、「男にしたい」というような人がいるだろうか。あるいは、自分を「男にしたい」と思ってくれる人がいるだろうか。

しかし、この方達の尽力にもかかわらず、三洋証券→北海道拓殖銀行→山一證券→徳陽シティ銀行と、次々にマーケットは金融機関を飲み込み、戦後最初の金融危機を招いたわけです。
そこで出てきたのが公的資金投入、特に資本注入。宮澤喜一、梶山静六、渡辺喜美の3政治家の案が出てきて(最近は政局がらみでよくテレビに登場される渡辺喜美さんも、最初は金融行政で大活躍されたわけですね。大したものだ。)、大蔵省はそれを八方美人的に取り込んでいくのだけれど、当事者であるはずの山口銀行局長が一番消極的だったというのがこれまた印象的。

326頁
不良債権処理を先送りし、場当たり的な救済でお茶を濁してきた過去の行政のツケが、すべて山口に回ってきた。銀行は潰れないと言い、危機対応や安全網の整備を怠ってきたツケもまた、彼が支払わなければならなかった。山口は不満と疑問を感じつつ、法案提出の実質的な責任者とされている。

印象論だけれど、「動」の長野、「静」の山口、といったところか。しかし、そのいずれも金融淘汰の嵐ではじけ飛ばされてしまうんだけれど。

本書のもう一つのテーマは財政再建で、こちらはどちらかというと政治家主導の印象。実際には大蔵官僚がいろいろ仕掛けたんだろうけれど、財政構造改革という、まさに政治そのものがテーマであるためか、与謝野馨官房副長官(現経済財政担当相)が主人公。この方って、やっぱりすごいお方なのですね。梶山静六官房長官とタッグを組んで大仕掛けを作っていく。政策と政局とが絡み合っていくのだけれど、与謝野さん自身は政策本位。

財政編で指摘されているのは、財政構造改革が経済情勢の変化に柔軟に対応する仕組みを構築していなかったことと、それに先行した「9兆円負担増」が、マクロ経済的議論をきちんとしていないまま、いつの間にやら実施されてしまったという、我が国政策決定の構造問題(要するに司令塔がいないということ。)(ちなみに、先般不幸があった山口厚生次官も登場します。)
これについては、経済財政諮問会議の設立が一つの答になっているわけだが、それの今日的評価も結構難しそうですね。

繰り返しになるけれど、新たな金融危機が生じている今日、10年前の危機の時に当事者が何を考え、そしてどうして失敗したのかを振り返るのはきわめて有意義だと思うのです。

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
ありがとうございます。
さくら博士
2008/12/23 07:38

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