蒸し米で祝ったのは誰だったのか? ~「大化改新」遠山美都男 著 読書感想文

「大化の改新」と言えば、古代日本が氏姓国家から律令国家に転換するきっかけとされる大事件。645年に起きた蘇我入鹿殺害事件から始まるのだが、その年号は、かもちゃんは「悪い入鹿を蒸し殺す(むしこ(=645)ろす」と覚えたもの。子供のために最近買った年号覚えのグッズでは、「蒸し米(むしごめ=645)で祝う大化の改新」となっていた。

実際に蒸し米で祝ったかどうかは知らないが、この入鹿殺害事件(乙巳の変)が、一体、誰によって、誰のために起こされたものなのかをとことん追求したのが本書。
http://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A7%E5%8C%96%E6%94%B9%E6%96%B0%E2%80%95%E5%85%AD%E5%9B%9B%E4%BA%94%E5%B9%B4%E5%85%AD%E6%9C%88%E3%81%AE%E5%AE%AE%E5%BB%B7%E9%9D%A9%E5%91%BD-%E4%B8%AD%E5%85%AC%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E9%81%A0%E5%B1%B1-%E7%BE%8E%E9%83%BD%E7%94%B7/dp/4121011198

教科書的には、中大兄皇子(後の天智天皇)と中臣鎌足が手を握って、権勢を恣にして大王位まで窺うに至っていた蘇我入鹿を皇極天皇の御前で刺殺(当然、「蒸し殺し」たわけではない。)。中大兄皇子に抵抗しようとした蘇我蝦夷(入鹿の父親)も諦めて自殺。皇極天皇は衝撃を受けて中大兄皇子に譲位しようとするも、皇子はこれを辞退し、代わりに軽皇子が即位(=孝徳天皇)、といった話になっているわけです。

このストーリー(日本書紀によったもの。)に、著者は厳しい批判を投げつける。
中大兄皇子は、本当に、入鹿暗殺の時点で、大王即位の有資格者だったのか?
それを検証するため、大王位継承のルールを探るのだが、このくだりはかもちゃんのような門外漢にはちょっと煩わしいですね。ここまで細かい考証経過を書かなくても良かったのではあるまいか。しょせん新書だし。
それはともかく、検証の結果、入鹿暗殺の時点では中大兄皇子は決して最有力な皇位継承候補ではなかったことがわかるわけです。

また、中臣鎌足をはじめとする「犯行」関係者同士の人間関係をつぶさに検証。その結果、中大兄皇子ではなく、軽皇子こそ関係者のネットワークの中心人物だったことが判明するわけです。(こういうことが、今までの研究では見過ごされてきたということが、かもちゃんには驚きなのだけど。)

こうした検証を元に、入鹿殺害事件の「首謀者」は軽皇子であり、事件の真相は、蘇我氏が推す古人大兄皇子を倒して皇位に就こうとした軽皇子が、中臣鎌足と結託して起こしたクーデターというべきものであり、今まで言われていたような、国家改造(律令国家樹立)を目指したクーデターではなかったことを解き明かすわけです。

謎解きの過程はやや冗長かつ細かすぎて、門外漢には退屈なところがかなりあるけれど、通説を完全に転覆させるプロセスはやはり迫力がある。この検証が果たして学問的にきちっとしたものなのかどうかは、門外漢にはまったくわからないけど、仮に問題があるのだとしても、それでも面白い。

気になるのは、仮に本書の指摘が正しいとしたら、ではなぜ、皇位に就いた孝徳天皇はその後実権を失い、悲惨な運命をたどることになるのか、中臣鎌足はなぜ殺害事件の「実行犯」でしかなかった中大兄皇子を擁立するようになったのか、という点。
本書の記述はそこまで及んでいないので、かもちゃんとしては、「?」が残ってしまう。
その点が説得力を持って解明されるのを期待したいですね。

なお、本書の題名の「大化改新」というのは、中身とちょっとずれているのではないか。だって、いわゆる大化の改新の中身についてまったく触れておらず、もっぱらそのきっかけとされてきた入鹿殺害事件(乙巳の変)の真相究明に終始しているのだから。
副題の「六四五年六月の宮廷革命」というのが内容に照らして正しい題名だと思うんです。題名は出版社の販売方針によってつけられたのだろうから、著者のせいではないと思うけど、でも、敢えて苦言を呈したいところですね。

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