出版が早すぎたのでは? ~「政権交代 民主党政権とは何であったのか」 小林良彰 著 読書感想文

この原稿を書いている時点では、三党(民主、自民、公明)党首会談が決裂し、政府・与党は自公両党の同意を得られないまま、臨時国会を今月29日に召集する方針を決定。これに自公両党は猛反発し、臨時国会は冒頭から大荒れ、という感じ。

・・・という状況なので、そういう状況の時に、本書を読むと、次のくだりに大いなる違和感があるのです。

151頁
こうして、8月29日、参議院で野田首相に対する問責決議案が野党の賛成多数で可決し、3年間に及んだ民主党による政権交代の幕が閉じられようとしていた。

小林先生、予想大外れですよ!!(笑)
出版はもうちょっと待って、様子を見極めてからにした方がよろしかったんじゃないかしら。

そもそも副題が、「民主党政権とは何であったのか」という、過去形になっているし。


それはともかく、これまでの3年強の民主党政権の在り方を振り返る本が中公新書から出たのでした。

http://www.amazon.co.jp/%E6%94%BF%E6%A8%A9%E4%BA%A4%E4%BB%A3-%E6%B0%91%E4%B8%BB%E5%85%9A%E6%94%BF%E6%A8%A9%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%A7%E3%81%82%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%8B-%E4%B8%AD%E5%85%AC%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%B0%8F%E6%9E%97-%E8%89%AF%E5%BD%B0/dp/4121021819
画像



目次より

序章 政権交代神話と二大政党制神話

第Ⅰ章 民主党政権の誕生
1 政権交代の予兆 小泉退陣から麻生内閣へ
2 政権交代の内実 自民党への不信

第Ⅱ章 混迷 鳩山の迷走から菅政権へ
1 鳩山内閣と普天間基地移設問題
2 菅内閣と参院選 「政治主導」の修正
3 脱小沢路線の内憂外患 中国漁船問題とTPP

第Ⅲ章 凋落、挙党体制の試み 大震災の衝撃から野田政権へ
1 東日本大震災と原発事故への対応
2 菅政権の延命策動
3 野田内閣下のマニフェスト修正
4 民主党政権の終焉 自公との協調と小沢離党

終章 民主主義再生は可能か
1 代議制民主主義の機能不全
2 より良い政治のためには


目次を見てもわかるけれど、本書の内容の大半は、民主党政権の誕生から鳩山・菅・野田の3内閣の誕生に至る事実関係の記述に終始。
このあたりは、「ああ、そういうこともあったな。」と思って軽く読んでいただく程度で結構な内容。

この中で同感するのは、12ページの次の記述。
「小泉はこの2005年9月の総選挙で有権者にさまざまな公約を掲げた以上、、その後4年間は首相の座にとどまり、公約を実現すべきであった。」

小泉内閣の施策に賛成か反対かは別として、衆院選で小泉自民党を大勝させた有権者の意向を尊重する立場からは、小泉首相は任期4年を全うすべきであったいう点には同意いただけるのではないか。


それはともかく、本書で真に意味があるところは、終章だけであろう。
政権交代をもたらした総選挙における有権者の投票行動を詳細に分析し、民主党のマニフェストが支持されたのではないことを明らかにした上で、真の民主主義を定着させるための具体的な制度提案を行っている。

ここで提案されているのが、「予算登録制度」(173頁)であり、要は、政党は具体的な予算案を掲げて選挙を戦う、というもの。とは言っても、野党は十分な情報を持ち合わせているわけではないので、おそらくは、例えば、
「高速道路予算は2割増にします」
「小学校の施設整備の予算は3割増にします」
とでもいったイメージなのだと思うのだが。

そして、衆議院の定数不均衡(いわゆる「一票の格差」)問題への対応としては、定数自動決定式選挙制度を提唱している(187頁)。
これは、なかなか興味深い提案だと思うのです。何より気に入ったのは、真の意味での「一票の格差」の是正が自動的に図られるという点。これまでも選挙区の定数配分を見直すことは行われているけれど、そういう、人口に基づく人為的な対応はどうしても限界があるし、真の「一票の格差」是正には原理的につながらないわけです。それを自動的に解決できるというのだから、興味深いではありませんか。

それと、参議院の選挙制度の在り方と、衆参両院の関係についての記述には大いに賛同できるのです。


さて、いずれにしても、小林先生には、改めて、民主党政権論の続編を書いていただくことになりそうなのです。

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