ものすごい人たちの姿が活き活きと描かれている! ~ 「小説十八史略(一)」陳舜臣著 読書感想文

今や、日中関係は、記憶にある中では最悪。
天安門で「人民解放軍」が人民を虐殺した時を上回る険悪さです。

でも、それでも、「中国」という言葉には、強烈な魅力がある。
多くの場合、それは、遙か昔から延々と続いている文明に対するあこがれではないかと思うのだが。

陳舜臣の「小説十八史略」を久しぶりに読み直してみたのです。

http://www.amazon.co.jp/%E5%B0%8F%E8%AA%AC%E5%8D%81%E5%85%AB%E5%8F%B2%E7%95%A5-%E4%B8%80-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB%E2%80%95%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E9%99%B3-%E8%88%9C%E8%87%A3/dp/4061850776/ref=la_B003UW38N6_1_10?ie=UTF8&qid=1354416534&sr=1-10

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目次より


日を射る者
酒池肉林
天道は是か非か
竜の唾から
怪腕自滅
春秋の友情
覇者をつくる男たち


復讐は我がいのち
兄弟逃亡
怨念は消えず
あざやかな恩讐
怨霊さまざま
逃亡者
王位転々
日暮れて道遠し
囚人部隊は行く
臥薪嘗胆
呉宮の蝶
恩讐の道
春秋の終幕


兵法の名門に生まれて
いざり軍師
いまや宰相
百家争鳴の裏方
危険な綱渡り
鶏鳴狗盗


人呼んで鬼谷先生
謀略学校
身は裂けても
汨羅に沈む
同門の弟子
追放令くだる
孤独な少年王
巨根の長信王
骨肉の争い


二重脱走
詭策あるのみ
易水の歌
事は成らず
老将軍再登場
天下は一つ
復讐謀議
空飛ぶ鉄槌
博浪沙始末
太公望書


最初の章のハイライトは、やはり、殷周革命か。
(これをテーマに、斬新なストーリーにしたマンガ「封神演義」についてはhttp://pu-u-san.at.webry.info/201211/article_57.html参照)

妲己によってどんどん無茶苦茶になっていく紂王。それが、周公による罠だったとは・・・
そして、周でも同じ話が起きてしまう。今度は幽王と褒姒(おんなへんに「似」)。この褒姒は、竜の唾から生まれたというのだから・・・
そして、「春秋五覇」の時代に移り、斉の桓公の話になるわけで、ここに登場するのが当然のことながら「管鮑」すなわち管仲と鮑叔牙のお話。
ところで、このお話についての筆者(陳舜臣)の解釈って、相当大胆だと思うのです。本当にこうだったなら、すごいよね。
だって、管仲はいわば鮑叔牙の手のひらの上で踊る孫悟空に過ぎなかったという話なのだから。


第2章は春秋の物語。

中心人物は、晋の文公(になる重耳)。重耳といえば、宮城谷昌光の作品が有名なのだけれど、前に読もうとしてすぐに挫折。全然面白く感じなかったんです。
それにしても、この、晋の国の話って、ものすごくごちゃごちゃしている。
そして、舞台は中原を離れて南に移り、登場するのは楚の伍子胥。
この伍子胥がこれまたものすごい。どうして中国史には、こういう、とても人間とは思えぬ人々が続々と登場するのだろう。
ここから呉越の攻防すなわち臥薪嘗胆の物語になるわけです。
薪はわかるけれど、肝って?ちゃんと下ごしらえしたならおいしいのだが・・・


そして、春秋の幕が下りていき、いよいよ、「戦国」に入っていく。これが第3章。

まずは、孫臏(にくづきに「賓」)の物語。
「孫子の兵法」の「孫子」って、この孫臏ではなく、孫武の方らしいのだけれど。
陰謀にかかって(このあたりは軍師としていかがかと思うのだが。)、膝から下を切り落とされ、その後、復讐に邁進するわけです。

そして、秦に商鞅が現れる。いよいよ、秦による中国統一の物語が始まっていくわけで。
商鞅が逃亡に失敗するお話は、これまた中国史で繰り返し出てくる「自業自得」のパターンなのだが、それにしても味わい深い。

第4章は強大化していく秦をめぐる攻防に入るわけです。
すなわち、合従連衡。
蘇秦の合従(6カ国が同盟して秦に対抗)か
あるいは
張儀の連衡(各国と秦の同盟)か
このあたりは、現代に置き換えても、20世紀後半のスーパーパワーである米ソとの関係をどう考えるか、、さらには21世紀の覇権帝国主義の国との関係をどう考えるかという点で、なかなか含蓄に富んでいると重う。

そうして、いよいよ、秦王政すなわち後の始皇帝が登場するのだけれど、そこに、あまりにあまりな物語が展開されるわけで。
(この、政の孤独さについては、鄭問の「東周英雄伝」でも丁寧に描かれていたのでした。)


そして、第5章は政に対する最後の反撃が。例の、「刺客」の話です。
秦が法至上主義であって、柔軟性を全く欠いていたことが改めて実感されるお話だよね。

そして、全土は統一され、政は「始皇帝」になるのだが。
張良が登場します。第2巻への展開が予見されるのです。



このように、ものすごいエピソードが次から次へと語られる。
どこまでが十八史略に書かれていたもので、どこからが陳舜臣オリジナルなのかは知らないのだけれど、文章が読みやすく、話にぐいぐい引き込まれる。
張良はどうなってしまうのだろう?是非、第2巻も読まなきゃあ、と思うではないですか。

やはり、名手は違うのだ。


ちなみに、張良はご存じのとおり、劉邦を助けて大活躍するわけだけれど。そのイメージ(作戦参謀)と、始皇帝の暗殺に失敗する姿(それはまさに実行者)とはかなり違うように感じるのだけれど。

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