教科書に載っていないエキサイティングな天皇論=日本論 ~「源氏と日本国王」 岡野友彦 著 感想文

本棚に並んでいる本を、久しぶりに読み直してみた。

http://www.amazon.co.jp/%E6%BA%90%E6%B0%8F%E3%81%A8%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E7%8E%8B-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%B2%A1%E9%87%8E-%E5%8F%8B%E5%BD%A6/dp/4061496905/ref=la_B004LQSKBA_1_2?ie=UTF8&qid=1365209828&sr=1-2

久しぶりに読んだので、内容はかなり忘れていて(笑)、そのおかげでそれなりに楽しめた。


目次
序章 源氏とは何か
第1章 源氏誕生
1 最初の源氏は誰か
2 源氏長者とは何か
3 源氏と王氏
第2章 武家源氏と公家源氏
1 武家源氏誕生秘話
2 公家源氏の「正統」
第3章 「源氏願望」の正体
1 源氏でなければ将軍になれない?
2 源氏になろうとした武将たち
第4章 征夷大将軍と源氏長者
1 征夷大将軍は日本国王たり得たのか
2 源氏の印象「宇宙」印
終章 王氏日本と源氏日本


この本はたぶんこれまで2回くらい読んだことがあって、かなりスリリングな内容だという記憶があった。
今回読み直しても、その印象は変わらないのだけれど、一方、かなり無茶苦茶ではないかというところも。
日本史学の素人がプロの研究成果にけちをつけるのも失礼ではあるのだけれど、まあ、素人というのはそういう浅はかなことを考えるものだ、と大きな懐で受け止めていただきたい。


まずは、本筋でないところから。
NHK大河ドラマ「平清盛」で物議を醸したことの一つに、天皇家を「王家」と読んでいたことがあげられる。
それを批判する側の考えを忖度するに、そもそも、「王」というのは、中国の皇帝により任命されるものであり、そのような呼び方を、「皇」である天皇家に対して使うとは何事か、ということであろう。
それに対して、NHK側は、「当時実際にそのように読んでいたんだからかまわないのだ。」という説明をしていたように記憶する。

本当にそうなのか?
本書81頁でその問題を取り上げている。
筆者は、「王家」と呼ぶのはたとえば藤原摂関家を「藤原家」と呼ぶようなもので、適当でないとする。また、いわゆる「王家」とは別に存在する「白河伯王家」との混同を招くおそれもあるという理由も挙げている。
そして、その代わりに「院宮家」と呼ぶことを提唱しているのだが、ちょっとそれは無茶ではないかと・・・


では、本書の内容へ。
結論をいきなり書くと、書名でわかってしまうのだけれど、「日本国王は天皇ではなく、将軍でもなく、源氏長者だった」というもの。ただし、それは足利義満が将軍と源氏長者を兼ねるようになって以降の話。
・「姓」と「苗字」の違い。「姓」は父系制的な血縁原理で継承し、「苗字」は「家」という社会組織自体の名。
 「姓」は天皇が与える公的な名前なので、天皇の一族に姓がないのは当然。
 (なお、「皇統」は天皇一族の父系性的な血縁原理で継承してきたものであるため、昨今いわれる「女系天皇」は明白に「皇統」の考えと相容れないことがわかる。本書35頁に書かれているとおり、皇統はあくまでも父系性的な血縁原理によってのみ継承されるのである。)
・「豊臣秀吉」は「羽柴」から「豊臣」に改姓したのではない。苗字は「羽柴」のまま。
・源頼朝は「源氏の正統」ではない。(「清和源氏の正統」ではあるのかもしれない。)
・足利尊氏は120年ぶりの源氏征夷大将軍。それまでは、むしろ、院宮家から任命されるのが常識となっていた。(護良親王・成良親王も含めて。)源氏の方が将軍にふさわしい、という考えはあっても、現実はそうではなかった。
・徳川家康が源氏に改姓したのは、将軍になろうとしてのことではなく、北条氏滅亡後の関東の支配をやりやすくするため。(鎌倉執権の北条氏を滅ぼした新田氏にならってのこと。)
・足利義満が「天皇になろうとした」という理解があるが、それはおかしい。義満がなろうとした(あるいは、なった)のは、天皇ではなく、「治天の君」。その意味で、義満による簒奪は見事に成功。
・足利義満の死去時には、既に義持が将軍職についていたが、それと義満の後継者問題は別。義餅は明との関係では「日本国王」になっていないが、「源氏長者」にはなっており、実質的に義満の地位を継承している。
・「日本」とは「王氏」の国のことであり、「日本」にとっての危機は豊臣秀吉による覇権主義=中華皇帝構想であった。
・南朝正統論は、武家社会の「家」原理に基づく考えであり、父系原理の「氏」原理になじむ公家社会では決して受け入れられないもの。この考えは、義満による「王権簒奪」を正当化する論理。公家社会の原理に従えば、北朝こそ真の「万世一系」。


どうです。なかなかエキサイティングでしょう。

ところが、今回読んでいくつか気になるところも。

最も気になるのは、足利義満が源氏長者の地位に就くことにより、「源氏長者=日本国王」という図式が成立することになるわけだが、どうして武家源氏が源氏長者に就くことができたのか、という肝心のことが書かれていないこと。
それが重大なポイントのはずなのにそれはちょっとひどいのではないか。

また、最後に再び公家源氏に源氏長者が戻ってくる下りの説明がないのも、唐突感が否めない。「宇宙」印の話はあまりに取って付けた感があって、何をいいたいのかさっぱりわからない。


というような、欠陥が多いとは思うけれど、普通の教科書には載っていないエキサイティングな天皇論=日本論を知ることのできる面白い本多とは思う。

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